身勝手な女の友情
気分もあらたに中学生になったころ、僕は校庭と運動場の間に咲く、長い藤棚の紫の連続を見るのが楽しみだった。
紫色は僕が当時一番好きな色。教室の机から窓ごしに毎日眺めていても全く飽きなかった。
風にのって届く藤の花の匂いはとても心地良かったが、たまに強風にあおられて飛んでくるアブは恐ろしかった。
日がだいぶ暮れだしたある日、部活の後片付けをすませた僕は、毎日登下校をいっしょにする友達を藤棚の下で待っていた。
すると、ひそひそ話す女の子の声が近づいてきた。
『わかった。私がいうよ。待ってて。』
小声で話しているようだったが、その時の風向きが悪かったのかよかったのか、
待ってて、という言葉は、僕に正確に届いた。
そして女の子が一人、僕の背中越しまで着たのが雰囲気でわかった。
『あの、○○くん。 ちょっと話があるんだけど。』
こ、これは、もしかして!? もしかしての!? と思いながら、僕は振り返った。
「はい。なんですか? 」
みると、同じ部活の3年生、ミサオという、女の先輩がひとり立っていた。
ミサオは、僕ら1年生の間でも 「 F 」だよ、「G」くらいじゃない、と、人気のあったいわゆる豊満な結構かわいい先輩である。
『あの、○○くんって、彼女とかいるの !?』
き、きた。これ、きたよ。告白ってやつじゃない。しかも、ミサオ。 やばい、俺、まじドキドキしてる。。。
「え、いえ、いまは別に」
単刀直入にいきなり本題がきた。
『じゃあ、好きな女の子とかいるの?』
「いや、別に。」
『よかった。 じゃあ、うちらの ミイって、わかる? 』
ん、ミイ ? ?
「あ、多分。わかります。 あってるか、わからないけど。」 (どっちやねんお前)。
『付き合ってくれない? ミイと。』
え、いきなり。。。 しかも、ミサオでなく、ミイ ??
「いや、別に、今、そういうの考えてないんで。」
はっきりミイがわからなかったことと、もしミイがぼくが思い浮かべた人と会っていたとしても、微妙にタイプではなかったこと、そして、まだ一度も話したこともない先輩といきなり付き合うのか、という抵抗感が重なって、僕はそう答えた。
もし、ミイではなく、ミサオなら、僕の回答は変わっていたかもしれない。
『わかった。ありがとう。じゃあね。』
といって、走って行ったミサオ。
日も落ち、すっかり暗くなった先の方で『キャー』という女の子たちの歓声が上がった。
。。。
タケという、待っていた友達が来て、僕は下校した。
そして、僕は、
よくわからないが、その日からミイと付き合うことになった。。。
ミサオ、あなた、なんて伝えたんすかね !
俺、付き合うとか、OKとか、一度も言ってないよ!!
この先、僕は、苦い中学恋愛に突入した。