身勝手な女と男の約束
よくわからないままに付き合うことになったミイと僕。
何故か、次の日の部活の終わりから、僕の意志は無視して一緒に帰ることになった。
『ちょっといい、広田くん』 とミサオの声がした。
広田くんというのは、僕が登下校をいっしょにしていた タケ のことである。
『ミイと○○くんは付き合ってるの。だから、二人で帰れるようにしてくれない?』
タケと僕は、少し空気をのんだ。と同時に、なんて無理いう女なんだと僕は思った。
なんでミサオにそこまで言われないといけないのか?
でも、タケは、気を使って、「うん。」と答えた。
え、何で。と僕は思った。
付き合うとか、まして一緒に帰るとか、とにかく、まったく心の準備も何もできてない状態で、僕に何をしろというのか ?
恋愛経験値が皆無に等しい僕にはあまりにハードルが高すぎる要求だった。
「・・・。」 ミイを左にした僕は、ミイと無言で歩く。
僕的には、人生経験がぼくよりも長い、ミイからリードしてくれることを自然と期待した。
しかし、ミイは まったく言葉を発しない。
僕は、右に走る車からミイが遠くなるように、ミイを僕の左に歩かせるのが精一杯だった。
この女は、何を僕に期待しているのか。
どんなことをしてもらいたいのか。
と、僕なりに想像した。
あまりの無言の時間の長さに耐えきれない自分がいた。
どうしよう。。。
僕は、思い切って、ミイと手をつなごうと、左手をミイの右手に近づけた。
しかし、ミイは僕の手を嫌がるかのようにミイの右手をぼくから離した。
「・・・。」
全然だめだ。
どうしたらよいのか。もうこの場から離れたい。
僕は、自分の家とは少し反対方向にあったミイの家まで無言のまま歩いた。
『送ってくれてありがとう。』
ミイの家らしき前で、ミイが僕に発した。
「ここが家なんですか? 」
『うん。送ってくれてありがとう。』
「 。。。 どういたしまして。。。 」
こういう場合、バイバイ、というのか? 抱き寄せてキスをするのか?
僕は、よくわからないまま、ミイの左肩に手をあてて、ミイの左頬にキスをした。
かすかに触れた感触の僕の唇は、確かに、ミイの左頬に触れた。
「あぁぁーっ!!」
ミイの家がある角の道から聞こえた声の主は、タケ だった。
『おやすみなさい。』 と言い残して、ミイは玄関へと消えた。
「なんでいるの? 」 僕は、タケに向かって歩いた。
「見てたの? 」
『見てたよー。』 と、にやにやしたタケがいた。
「なんか、全然よくわからなかった。」 と僕はとぼけた。
『何が』
「・・・。」
僕は、ズボンの左ポケットに手をつっこみ、まったく整理できない自分の感情と行動について、痛いくらいにパンパンにふくらんだズボンの前をその左手で押さえつけながらタケと帰っていった。
「なんでついてきたの ? 」
『なんも言わずに、ミイと帰りだしたのお前じゃん。』
「あ、そうか。ごめん。」
『一緒に帰るって約束したのお前じゃんよ。』
僕のふくらんだ前の状態を知らないタケは、タケが右肩にさげていたまだ真新しい白い雑嚢を軽く僕のおしりにぶつけた。
その衝撃は、僕のふくらんだ前に余計な痛みを与えた。
「そうだね。ごめん。」
といって、僕は、左手でぐっと僕を押さえた。
しかし、タケも物好きである。
まったく方向の違う帰り道をわざわざ律儀に着いてきたのだ。
『明日もついてくるぞ。』
「えー、やめてよ。」
部活やファミコンのたわいもない会話をしながら、タケと僕は家の方向に歩いた。
一度ふくらんだ僕の前は、家についても、しばらくパンパンのままだった。