既婚バイのHIV記録

HIVに感染した既婚バイの思いのまま記録するブログです。
エイズ発症はなくほぼ普通に生きています。
これからの人生とこれまでの人生、今の自分、家族、仕事など、思いのままつぶやいていきます。

バブル戦争

翌朝8時に私立高校に集合した僕らは、高校生といっしょに午前中はこれまで中学の練習ではやったことのない内容の厳しい耐久練習と反復練習を行い、午後は対抗戦となった。


練習試合とはいえ、高校生も容赦はない。
圧勝することが高校生に課せられた成果であったし、相手が中学生であろうと少しも手を抜くことは許されない風土であった。
そして、ぼくらはなんとか勝つことが当然の目標になる。


結果はやはり高校生の圧勝であったがそれでもぼくらも善戦した試合もあった。



男子高であるにもかかわらず、なぜかスコア係には女子高生が数人いて、丸いフォルムの一人の女の子を除いては、青と赤のスカーフをまいた制服がよく似合う上品な女の子たちだった。


そのうちのSさんは、近くの女子高に通う高校1年生ということを後で聞くことになったが、少し目元に青紫系のシャドーをいれたような感じの、いわゆる僕が好きなタイプの目のセクシーな女の子で、実は対抗戦の時から、僕はSさんをちょっと意識していた。


時々Sさんをみると、Sさんと必ず目があった気がした。というよりも、よく目が合った。
そして、ニコッと目があった僕をみて笑顔を見せてくれた。


僕は本能的にSさんも僕に興味をいだいているような感覚を得ていた。




僕らの中学では、試合の結果有無にかかわらず、対戦相手に細かくアドバイスを一人一人がもらいにいくというのが一連の流れであった。


僕がアドバイスをもらっていたうちの一人の高校2年生T先輩は、僕に足の運び方や身体の動きに関する技術的なことを細かく教えてくれた。
そして、僕のその競技に対するセンスの良さをとても褒めてくれた。


T先輩は、いわゆる特待生として、その私立高校に遠方から進学してきた人で、中学総体では決勝で戦った成績をもつ人だった。
だから僕はT先輩から褒められたことがとてもうれしかった。


そのアドバイスと褒め言葉は、僕のその後の競技生活やそれから先の長い人生のとある場面で僕に未だに自信を与えてくれている。


当時部員が全員坊主頭だったということもあって、T先輩ももちろん坊主頭だったが、そのきれいな形の小さな頭が少し羨ましかった。そして、顔はというと、いまでいうところの藤ヶ谷太輔似の少しエキゾチック感あるきれいな目鼻立ちをしていて、どことなく、やはり僕の中ではセクシーだった。


藤ヶ谷太輔がイケメンかどうかの判断は個々に任せるとして、簡単に言うと、坊主頭のイケメンは、何を着ても、どんな髪型をしても、かなりイケメンである。



練習を終えた僕は、中高生みんなで食事する夕食の前の空き時間に、T先輩が生活している高校近くの寮の部屋に呼ばれていた。
といっても、私立高校の先輩はみな、全寮制で部活漬けの毎日を送っているから、すべての先輩がそこで共同生活している。


寮の入口には、「女子立入厳禁」と木に彫られた看板が立てかけてあって、いかにも、男子校の寮、という感じだったが、中に入ると、しょっぱなから、寮母のおばちゃんがいた。


「あの、T先輩の部屋は2階ですか?」


『合宿にきた中学生 ?  練習お疲れだったね。』


『2階の突き当りの一番奥の左。ドアにおニャン子のポスターが貼ってるあるよ。』と言われた。


おニャン子ね。  誰のかな?   って、なぜか強く興味をもった。



部屋の前に行くと、「高井麻巳子と岩井由紀子」の顔があった。


「うしろゆびさされ組」かぁ。 ちょっと意外だった。 


僕のイメージでは、渡辺満里奈 あたりを予想していた。


T先輩どっちが好きなんだろ ? 


僕的にはもしこの2人のうちどっち、となれば、ゆうゆ を選択する。


コンコン。 「○○です」とドアをノックした。


『おー、入っていいぞー』と、返事があったので、ドアをあけた。


僕の中では、脱ぎ捨てられた服が重なったまま放置され、成人本がバラバラと無造作に積まれている部屋を想像していたが、とても、小奇麗にまとまった清潔感ある部屋だった。


部屋の左にある机の上は、教科書が背の高い順に几帳面に並べられていたが、TDKとマクセル、そして、僕が当時一番好きだったAXIAのカセットテープは無造作に積まれていた。


そして部屋の右にある少し小さめのベットには、ネピアの青い箱と、きっと朝起きたままの形であろうタオルケットがそのまま置かれていた。



普通、「今日はお疲れ様でした。有難うございました。」と、入室するなり、まず挨拶するところだが、僕は、何を思ったのか、「先輩、どっちのファンですか? 」といきなり聞いてしまった。


『あ、ポスター? のこと。あれ、違う違う、俺のじゃないよ。前にいた先輩のだよ。』


という拍子抜けする答えだった。


そして、今はいったドアの方を指さして、『あれ』と言った方向を振り返ってみると、


渡辺 満里奈 がいた!    ビンゴ!! (表現古い)。



「かわいいっすよねー。満里奈 !! 」



その瞬間、僕はものすごくT先輩と親近感がわいて、部活のことをはじめ、いろいろと先輩の彼女の話や特待生としての話や寮生活のことなどについて聞きあさった。


練習の時によくわからなかった足の動かし方や身体の使い方のポイントをもう一度きいていた時、T先輩は、業を煮やしたのか、僕の背面にまわり、僕を抱き込むかのように身体を密着させて足と腰と手の動きを指導した。


『ここからこう動かして、そう、その感じ』


みたいな時間が数秒あったが、僕には、やたら長く幸せに感じた。


密着した身体の僕の右肩からはT先輩の優しい声がし、僕が少しでも後ろに顔をむけるものなら、それは唇と唇が届きそうな距離感だった。



コンコン。 『入るよー』、と声がすると、開いたドアの向こうにSさんがいた。



あ、Sさん。と僕は焦った。


ていうか、え、簡単に女子入ってるやん。この寮。


と思った。


僕は、練習の時の Sさんとの目が合う感じのドキドキ感がよみがえり少しあわてたが、T先輩は、「おう。」といって、何事もなかったかのようにSさんを部屋にいれた。



じつは、T先輩とSさんは、お付き合いしていたみたいだ。


いわゆる美男美女カップルである。



Sさんは、高校の学食での、食事の準備ができ、部員らみんなが食堂に集まってきたみたいだから、呼びに来たようだった。



食事がおわり、風呂の時間となったが、高校の施設には風呂はなく、壁にささったシャワーヘッドがずらっと並んでいた。シャワールームは、ラグビー競技場のシャワールームのように、そこに敷居やカーテンなどはなく、完全ノーサイドを演出するシャワールームだった。


シャワーをみんながあびていると、僕らの中学を卒業したその高校の先輩が、ホースで冷たい水をバラ撒いてみんなにあびせた。
「やめろバカ」「冷てー」「ギャー」と、裸の男子高校生と中学生は、今にも滑りそうなタイルの上で必死に転ばないように、少しガリ股で重心を落として走り回ったが、一番端っこにいた僕にはまだ危害が加えられてなかったせいか、僕にはその映像が面白かった。


その瞬間、僕の眼に痛みの衝撃が走った。


「わアー――。」


といったが、目が明けられず、シャンプーの泡を背後から顔に塗られたことに気付いた。


急いで、目を洗い、かすかに目を開いたとき、僕の前に、裸のT先輩が、泡の弾を両手に掲げて僕の方を見て爽やかに笑っていたかと思うと、『ビール』と言って、僕の頭にその泡をのせてさらに泡立てようとしたが、僕も坊主だから、きっとビールのように泡は立たなかったと思う。



それにしても、爽やかでかわいい無邪気な笑顔だった。 



よく目を洗ってあたりを見回すと、そこは、泡だらけの戦場となっていて、僕の先で、タケもT先輩の泡玉の餌食となっていた。



目はだいぶ痛かったが、なんとも楽しいバブル戦争の初体験となった。



バブルタイムが終わったあと、僕は、もっと上達したかったこともあって、T先輩にまた練習の相手をしてもらうことやたまに部屋に遊びにいってもいいかということをお願いした。




P.S. 因みに、タケは、高井麻巳子のファンだった。

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