オサムのローラースケート
週末の土曜日、練習が終わったオサムと僕は、あの「女子立入厳禁」と掲げられた木製の看板の前にいた。
T先輩に来ても大丈夫、と言われていた時間より少し早く私立高校の男子寮に着いたので、その看板の前で、僕とオサムは夏合宿の時の試合の模様を真面目に語っていた。
「あのとき、あーだったよね。」とか、つらつらと。
そして、
「T先輩、満里奈らしいよ。」
「俺も今いっしょやねん 。おニャン子なら。」
「オサムは誰好き ?」
え、
『俺、あんまり興味ないから、わかんないや。』
と、割とつまらない回答をもらった。
おニャン子の話題、終了ー。
と思ったら、
『こんにちわー。アッ子さん、こんにちわー。』
と、オサムが急に足を、すいすい、しながら、何やら、 かーくん の物まねをして、
僕の顔の前まで近づいてきた。
「でかっ。っていうか、近っ。」と言って少しのけぞった僕。
何だか、良くわからなかったが、勢いに負けて結構笑った。
だいたい、オサムは中1にしては 身長が180cm近くあってガタイも良く、当時、150cm
くらいしかなかった小さい僕には、あまりに巨人だった。
正直、近づかれたら、あまりにデカすぎる。
それにしても、オサムの足は、ローラースケートのマネだとわかるが、顔はまったくもって、かーくんに全然似てない。
『かーくんがいい。チョーカッコいい。』
と、オサム。どうも、オサムは、諸星くんに憧れているらしい。
「え、光GENJI、ですか? 先生 ? 」
「じゃあ、俺、山本くんやるー。」
といって、オサムが諸星パートで、僕が山本パートで、とりあえず、「ガラスの十代」を
歌い、その二番には、僕たちの中で当時流行っていたエロ版の替え歌を歌いながら、二人で大爆笑しながら時間をつぶした。
あー、箸が転がっただけでも面白い青春時代っていいなって、今でも思う。
いろんな意味で本当に「ガラスの十代」。
約束の時間になり、僕とオサムは、「失礼しまーす」といって、寮の玄関に入り、階段を登ってT先輩の部屋に向かった。